渋谷のライブハウスに聞いた、現代のライブハウスの在り方



【メンバー】川崎 秀一(チェルシーホテル/スターラウンジ/Club MALCOLM 総支配人) 小池 隆平(渋谷CLUB CRAWL 店長)

今回は、チェルシーホテル/スターラウンジ/Club MALCOLMの総支配人である川崎氏と、渋谷CLUB CRAWLの店長の小池氏を迎え、ライブハウスで働く事になったきっかけや、平日のブッキングイベント、現代のライブハウス運営について独自の視点で語ってもらった。




[インタビュー・編集:仲尾静輝 撮影:増村 ゆき]



CRAWLは純粋に良いバンドを発信していく場でありたいなと思っています。(小池)


ーーお二人が今のライブハウスで働くことになったきっかけをお聞かせください。小池さんは以前、雑誌編集者をしていたそうですね。



小池:そうなんです。専門学校を卒業して雑誌編集者として3年程働き、その後に渋谷 duoというライブハウスで働きました。その時に編集者時代の知人から「マネージメント会社をやるから手伝ってほしい」という誘いを受け、1年程働いたのですがある日「給料払えないけど続ける?」と言われて、「じゃあやめます」という風になりまして。(笑)



ーー給料を貰えないのはキツいですよね。


小池:その会社を辞めたあと駒沢にあるストロベリーフィールズというライブハウスで働くことになり、そこで当時の渋谷CRAWLのスタッフと出会って紹介してもらう形で働くことになりました。


ーーそうなんですね。ブッキングを始めたのはいつからですか?



小池:ブッキングはストロベリーフィールズの時からですね。当時は何も知らなかったので、色んなライブハウスのスケジュールを見て、音源を聴いて良さそうなバンドを誘っていました。

ーー川崎さんは15年程LD&K(ライブハウス運営やレーベル業を行う企業)で働いておられますが、その前は何をされていたのですか?

川崎:バンドをやっていました。そのバンドの音源をLD&Kから出したのが始まりですね。
自分のバンドの他にもコンピレーションアルバムの企画をしたりして、それをLD&Kから出していたんです。そういった中で、チェルシーホテルがオープンする事になって、声が掛かったという形ですね。



ーー渋谷と聞くとディープで遊べるスポットが多いイメージなのですが、そういう場所ならではの苦労みたいなものはありますか?

川崎:一番はやっぱり競合店が多いことですね。でもライブハウスが多いからサーキットイベントをやってもらえたりする部分もありますね。



小池:CRAWLは渋谷駅から徒歩15分と駅から離れたところにあるので、逆にサーキットイベントに加われず、いわゆる有名なバンドに出演してもらう機会は少ないですね。



川崎:サーキットイベントってドリンクがあまり売れなくなるので売り上げとしてはそこまで上がるわけじゃないんです。結局お客さんは外で飲むので、斜め向かいにファミリーマートがあった時は、そこのお酒が無くなっていました。(笑)


一同:(笑)。



川崎:ファミマの一人勝ちでしたね。



ーーCRAWLは駅から離れたところにあるということですが、そういう事から他のライブハウスにはない魅力はありますか?



小池:「地方感が強いライブハウスですね」と出演してくれているバンドにはよく言われます。意識しているわけではないのですが、若いスタッフが多いからなのかバンドともフレンドリーに接する事が多いですね。



ーー川崎さんからみたCRAWL、小池さんからみたチェルシーホテル・スターラウンジはどういう印象ですか?



小池:チェルシーホテルもスターラウンジももちろん大先輩ですし、あの激戦区の中でしっかり名を残しているのはすごいなと思っています。



川崎:先ほどの話でCRAWLは駅から遠いというところで家賃は安いんじゃないかなと(笑)

小池:中心部より安いとは思いますけど、実際の値段は知らないんです。そんなに変わらないんじゃないですか?



川崎:うちは家賃との戦いみたいなところがあるので、やりたい事よりも「お金を稼がなきゃ
いけない」と思っている部分が大きいです。ネームバリューのある街は家賃も何もかも高いですよね。


ーーCRAWLは若いバンドが出演しているイメージが強いのですが、ブッキングやライブハウスを営業する上でのポリシーはありますか?



小池:CRAWLは、純粋に良いバンドを発信していく場でありたいなと思っています。ブッキングをする時は、なるべくジャンルが合ってバンド同士が繋がれるようにしています。最終的にクロールに出てよかったなと思ってもらえたら嬉しいですね。


川崎さん:ポリシーを一言で言うなら「みんなが幸せになれるようにすること」ですね。
幸せに繋がる部分で何かしらのメリットを提供出来るようなブッキングをしたいなと思っています。



ーーチェルシーホテルとスターラウンジはジャンルを分けたりなど意識していることはありますか?



川崎:そもそもチェルシーホテルは2003年から営業していて、スターラウンジは2010年にオープンしたんです。2009年頃はチェルシーホテルだけでも平日のブッキングをするのが辛くなっていたんです。そういう状況の中で上の階にスターラウンジが出来る事になり、スターラウンジは出来るだけレンタルで埋まるようにしたいと思っていました。今でもそれは残っていますね。



ーー平日のブッキングが難しいうえに人が入らないと言う話は、ライブハウスの人からよく聞きます。そういったの状況の中、ライブハウスのブッキングイベントは必要だと思いますか?



小池:僕は必要だと思います。ブッキングイベントはライブハウス主催なので「うちはこのバンドを推してますよ」という色も見えるし、バンドも箱借りを頻繁に出来るわけではないので、バンドに気軽にライブしてもらえる場として必要だと思います。



川崎:「出たい」と言うバンドがいるうちはやりたいと思っています。ただ上手く組めない日もあって、出演してほしいと思ったバンドがみんな出てくれたら楽しいのですが実際そうはいかないところもあるので、そういう時は苦痛ですね。



小池:自分が呼びたいバンドで固まって、お客さんもしっかり入るイベントって、もしかしたら年に1回あるかないかぐらいですよね。

ーーそういった経験をしてきた中で、「この仕事で食べて行こう」と思った瞬間はどんな時ですか?



小池:給料は少ないので、楽しいからやり続けているところはありますね。個人的には昔から「このバンドいいよ」って友達に紹介したりする事が好きだったので、その延長線上なのかなと思います。

川崎:明確にこういう事があったから働いているっていうのはなくて、なんとなくライブハウスで働けるようになって、バンドを呼んでイベントをするということが人よりも出来たからですかね。



「家賃いくらか教えてやるよ!」って言いたくなりますね。(川崎)




ーー近年ではチケットノルマについて、様々な意見が飛び交っていますがどう思いますか?



小池:認識の仕方次第だと思いますね。ノルマ=お金を払うというイメージが定着しているのは問題だと思います。僕の場合はノルマはスタジオ代のようなものと説明していて、大体4人編成のバンドでも1人が3〜4人呼べば達成出来るくらいの条件に設定している事が多いのですが、その数も呼べなくてライブしてて楽しいのかなと思います。



川崎:ノルマはもちろんかけていますね。それで「ノルマがあるなら出ません」というバンドはノルマ分も呼べないバンドなので、そう言うバンドには「家賃いくらか教えてやるよ!」って言いたくなりますね。(笑)



小池:やりたい事をやるには、基本的にお金がかかるものですよね。

ーー私の中では、渋谷のライブハウスは怖いイメージがあるのですがどうなのでしょうか?



小池:不良の溜まり場みたいな昔からのイメージですよね。地下だし、暗いと言うのもあると思います。



川崎:僕も同感ですね。昔はライブハウスでも暴力的な出来事とかも結構ありました。お客さん同士の喧嘩とかもあって自分も止めに入って因縁つけられたりしましたね。最近はそういう事は減りましたね。



ーー二店舗ともビルの中で経営されておりますが、近隣からの苦情などはありますか?



小池:周りが住宅街なので、ライブハウスでよくあるビルの前に溜まらないようにというのは徹底していますね。

川崎:うちは他のライブハウスに比べると苦情はかなり少ないんじゃないかと思います。たまに、各フロア同士でそれなりの券売数でオープン時間がかぶると混乱することもあります。そういう時は、できるだけ早く入場させるように努力しています。


小池:うちも上にセブンイレブンがありますが、うちのお客さんがセブンイレブンに行くことも多いので、仲良くやっていますね。



ーー4月から受動喫煙禁止法が施行されますが、対策はされているのでしょうか?



小池:今はホール内は禁煙で、廊下では喫煙可能となっていますが、4月からは全面禁煙にしたいと思っています。



川崎:うちも全面禁煙にしたいです。条例が適用されれば、「どうして吸えないんだ」という人に対しては説明しやすいですよね。でも「タバコを吸いたいから外に出たい」と言う人も増えると思うので、再入場についても考えないといけないなと思っています。



小池:うちは既に再入場禁止にしていますね。



ーー渋谷CRAWLでは「SAKIDORI RECORDS」を発表されましたが、ライブハウスがレーベル等の業務を手がける事にはどういった理由があるのでしょうか?



小池:うちとしてはレーベルで売り上げを立てようというつもりはあまりなくて、バンドがメジャーに行った時に足元を救われないように、礼儀とかシステムを教育するようなイメージでやっていますね。あとはクロールに出てるバンドの目標になれば嬉しいです。

川崎:自分も過去にアーティストのCDを出したりしましたが、上手くいかない部分があり、自分はライブハウスの仕事までにした方がいいなと思いましたね。




ーーそういった中で、ライブハウスで働いていて嬉しかった事や辛かった事はありますか?



小池:バンドが大きくなっていく事ですね。うちだったらMrs. GREEN APPLEや、おいしくるメロンパンとかは一つ一つ階段を登って行っている感じはありますね。あとは自分が組んだイベントがソールドアウトになるとやっぱり嬉しいですね。逆に、バンドも決まらずお客さんも1〜2人の時は、バンドにも申し訳なくなりますね。

川崎:良かった事は有名になって行ったバンドの売れる前のライブを見れたり、売れているバンドが凱旋ライブをしてくれたりすることですね。